「農福連携」は、就労困難者の就労ニーズと農業分野の就業人口の減少や高齢化による担い手不足を繋げる手段として、近年期待が寄せられています。しかしながら、主な農福連携の形態は福祉法人が自法人内で農業を始めたり、単独で農業法人と契約を結んだりなど、個々の活動にとどまるケースも多く、福祉法人や農業法人が連携して積極的に農福連携を推進する体制づくりにはまだ至っていません。
私たちは、農福連携を積極的に進められない原因として、次の3点を考えています。
(1)農作業に対してハードルが高いこと(農業技術の習得が難しい、農業技術のある指導員や人材不足)
(2)生産規模が小さく農作物の販売先の確保や大手取引先の獲得が難しいこと
(3)資金確保が難しく必要機材購入などの施設整備ができないことなど
農福連携に福祉と農業の双方の課題解決への期待を寄せる反面、結果がすぐには見えにくいのも原因ではないでしょうか。そのため、農福連携によって障がい者、ニート・ひきこもり等の就労困難者の就労促進をするには、導入の阻害要因を1つずつ払拭しながら成果を発揮するための仕組みづくりと大胆な事業推進が必要です。
本事業では、農業と就労困難者をつなげるだけでなく、農福連携を通じて、誰もが生き生きと働ける環境づくりや、農業の発展的拡がりをめざし、元気で温かい地域コミュニティの創生につなげたいと考えています。
農福連携によって、障がい者やひきこもり・ニート、手帳などを持たないグレーゾーンの人たちが、高齢化し後継者のいない農業者や、一軒だけでは通期雇用が難しいということで農業の存続に不安を抱えている農業者の力になれると考えています。共に支え合い助け合いながら地域全体を優しく元気にしていく社会を、農業という器を使って、全国の仲間と共に目指します。
中長期的なゴール・成果目標/2029年ごろ
本事業を実施することにより、事業実施地域において以下4点が進むことを目指します。
1. 多様な人材が活躍できる環境整備
就労困難者にとって農業が有力な就労の選択肢となり、就労環境が整備され、一緒に働く人も全員が生き生きと就労できている。
2. 農福連携に取り組む組織の拡充
福祉法人以外の多様な組織が農業との関わり(就農・加工所等)を支援する活動が、地域に定着している。
3. 農福連携による事業化の実現
農福連携の事業収益が向上、継続的な雇用維持、新規就労者の拡大等が図られ、当該事業が経営的に自走している。
4. 農福連携による地域共生社会の実現
農福連携の取り組みが広く認知され、農作物の購入やボランティア活動等に地域企業、学校、住民等が積極的に参画している。
事業目標
1.実行団体に期待する活動概要
複数の福祉法人や福祉団体と複数の農業法人や農家が連携して関わり、地域全体での農福連携が推進され、自立的に発展していくことを目指します。そのため、実行団体は、資金分配団体の資金支援・伴走支援により、農福連携が進まない課題を解決するため、主体的に以下のような活動を行ないながら、事業推進していくことを期待しています。
1)農福連携推進体制の構築
・農福推進リーダーの育成
・農福応援団の獲得
2)受入体制の構築
・農業就労サポーターの育成
3)農作物の生産性向上・販路拡大
・専門家からのアドバイス
・休眠預金による必要な初期投資
課題解決への道筋/本事業を通じて行なうこと

2.資金分配団体による伴走支援(予定)
1)研修・機会提供
・農福推進リーダー研修、事例視察、実行団体同士の交流会
・農業就労サポーター研修
2)連携推進
・地域内外の賛同者・協力者への働きかけ
・ボランティア派遣スキームの構築
・ボランティア講座の開催
3)生産性向上・販路開拓支援
・課題解決のための専門家紹介
・商品開発、販路紹介
・マルシェ出店支援
・パートナー企業開拓支援
4)ネットワークづくり
・実行団体同士のプラットフォーム構築
・農福連携に取り組む団体同士の情報発信の仕組み構築
3.事業実施イメージ
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4.各年度で実行団体が行なうこと(イメージ)
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5.短期アウトカム(目指す状態)/2027年2月ごろ
短期アウトカム | 指標 | 目標値・状態 |
---|---|---|
実行団体の事業実施の結果、農業を通じて地域の就労困難者が生き生きと就労できている。 | 就労者の能力やモチベーション | 就労者、受入農家、福祉法人等へのアンケートやヒアリングの結果、就労者の能力やモチベーション(できること、出勤率、労働意欲)が向上している。 |
事業実施地域において、実行団体の農福連携の推進機能が強化され、福祉法人・就労困難者と農業法人への積極的なマッチングが進んだ結果、多様かつ複数の福祉法人と農業法人との連携が進み、農業に参加する就労困難者が増加している。 | (1) 本事業に関わる就労困難者の数 (2) 本事業で就労できた就労困難者の数 (3) 就労困難者の多様性(障がい者(A型・B型)、ひきこもり等) | (1) 実人数で200名以上増える (2) 実人数で50名以上増える (3) さまざまな就労困難者(障がいの種類や程度、事情、特性など)が受け入れられている (いずれも福祉法人との請負契約等を含む) |
資金分配団体による研修への参加の結果、農福推進リーダーと農業就労サポーターが地域の農福連携の取り組みを推進、支えている。 | (1) 農福推進リーダーの数 (2) 農業就労サポーターの数 (3) 農業就労サポーターの多様性 | (1) 1人以上 (2) 20名以上 (3) 複数の属性(農業法人他、企業人ボランティア、地域住民等) |
事業実施地域において、農福連携説明会・就労体験会の実施の結果、福祉法人、農業法人双方の農福連携への理解が深まり、参画者が増加している。 | (1) 開催の数 (2) 参加者の数 (3) 参画福祉法人の数 (4) 受入農業法人の数 | (1) 年に1回以上 (2) 年に20人以上 (3) 3年間で10以上 (4) 3年間で5以上 |
事業実施地域において、取り組みの発信、ボランティア体験会の実施の結果、農福連携への理解が進み、農作業や販売における地域住民や企業等からのボランティア等、事業への理解・支援者である農福応援団を獲得・定着している。 | (1) ボランティアに参加する企業等の数 (2) ボランティアの数 (3) ボランティアの多様性(職業、関わり方) (4) 協業形態の多様性 | (1) 1つ以上増える (2) 20名以上増える (3) 企業や地域住民・学生など多様なボランティアが多様な形で関わっている (4) ボランティア以外のパートナーシップが生まれている(購入ルート等) |
事業実施地域において、作業分解の取り組みや施設整備、就労困難者の作業習熟により、全体としての生産性が上がり、生産量が増加している。 | 生産性の向上(労働時間に対する成果物の増加) | 平均10%の向上 |
事業実施地域において、新規商品開発、協力企業の獲得、新規販売ルートへの営業等を通じて、農福連携を通じた農作物や六次化商品の種類が増え、販路が拡大し、地域農業にも寄与している。 | (1) 生産品目の増加 (2) 農福連携を通じた農作物の販売ルートの確保 (3) 農福連携を通じた農作物の販売先の数 (4) 地域マルシェの開催や参加 | (1) 1種類以上増える (2) 1つ以上増える (3) 5か所以上増える (4) 年に2回以上 |
事業概要
1.事業名
農福連携による共生社会創造事業
~農業を器とした就労困難者の居場所と出番づくり~
2.助成期間
2024年4月から2027年2月まで
※ただし、助成開始時期は、選考および契約の手続き等により変更する場合があります。
3.助成総額
1億8,000万円(別途、評価関連経費:900万円)
4.団体あたりの助成額
2,000万円~4,000万円(3年間の合計)※補助率は原則80%以下
別途、評価関連経費は助成額の5%以内
5.対象地域
全国
6.採択予定実行団体数
5~7団体
7.対象団体
農福連携を実施している、または実施したいと考えている団体で、
・福祉法人等の就労困難者を支援する団体
・中間支援団体やネットワーク
・農業法人
などで、地域全体での農福連携推進と持続化を目指し、本事業期間内で事業遂行能力がある団体。
8.実行団体が目指す姿(イメージ)
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