2018.10.01

第2回/万引き家族と樹木希林

女優の樹木希林さんが亡くなった。大学生になり、上京した初めての休日に訪れたのが、樹木さんが最初に所属した、信濃町にある文学座のアトリエだった。杉村春子はじめ太地喜和子など文学座の女優さんはみんな好きという感じだった。最初に勤めた千代田女学園は樹木さんの母校でもあり親近感を持っていた。「寺内貫太郎一家」を楽しみに観ていた世代としては、樹木希林は存在感あり、かつ軽やかさも兼ね備えた憧れの女優さんだった。何とも寂しい。

「万引き家族」でのおばあさん役も、骨太さと哀れさを併せ持つ素晴らしい存在感だった。

虐待されていた女の子を引き取って(社会的には誘拐だが【笑】)世話を焼く樹木希林の姿には、育ちや境遇を超えた母性を彷彿とさせる強さとはかなさが混在している。

虐待や貧困で辛い思いをする子どもたちを支える伴走者の研修を10月から始めるが、原点は、児童精神科の本間博彰先生の言葉だ。「過酷な境遇にある子どもたちはたくさんいるが、そのまま落ちていく子どもと、そこから立ち上がって成長する子どもがいる。その違いを作る大きな要素の一つは、身近に、自分のことを親身に思ってくれる大人がいるかどうかである」。映画の中で、女の子が、お兄ちゃんの帰りが遅いので心配して縁側で待っている場面がある。それを見た母親役の安藤サクラが、「優しくしてもらったことがない子は、こんな風に人のことを心配するなんてできない。誰かに優しくしてもらったことがあるんだね。」

実は、祖母には優しくしてもらっていたことがわかるという設定。

「マイナスのこと、また、マイナスのことがある。でもすべて心の栄養になったわね」と言う話を樹木さんが言っていた。現実をありのままに受け止める強さとしなやかさ、そしてはかなさが最後に見せてもらった演技だった。

映画から学ぶことが多いが、秋からの研修(※下記注釈)で、辛い状況にある子どもたちが、強く成長するための伴走者が地域にたくさん輩出したい。そのために謙虚に粘り強く、かつ軽やかさも忘れずに尽力したい。時々、伴走者が転んだりつまずいて、弱音を吐くのもいいかもしれない。子どもたちが手を差し伸べてくれる・・・かも。

【秋からの研修】 “子どもの『貧・困』” 伴走者育成研修~誰も取り残さないために、今、動き出す~

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