2021.02.01
第26回/久里浜少年院のボランティアを実現させた仲間たち
この件は、第14回のブログ でもご紹介したが、2年目にして、初めてミニ胡蝶蘭の贈呈式が実現した。久里浜少年院は、犯罪を繰り返し、かなり精神的にも追い込まれた少年たちのための施設なので、一人で実施するボランティアという条件だった。椎名洋ラン園 さんに協力いただいて、彼らに、ミニ胡蝶蘭を育てて花を咲かせ、高齢者施設などに寄贈してもらうボランティアを考えた。ことしは、開始が遅れ、育成が冬にかかってしまい開花も遅れた。椎名さんが訪問して確認し、やはり、暖房のある所に移動させなければということで、花の引っ越しをした。冷暖房のない独房にいる少年たちは、「僕たちも連れて行ってー」と冗談を言っていたらしい。
そして贈呈式当日。開花した鉢は少なかったが、つぼみはしっかりついていた。当日は、私たちも手伝って、プレゼント用の箱を組み立てたり、リボンをつけたり、そして、メッセージを書いてもらった。ざわざわした中で、何を書くのかなーと、少々心配したが、「気を付けてね。毎週水を飲んでください。空を見てください。幸せに育ってください」「ほっとかないで」「コロナが大変かもしれないけれど、毎日花のように笑顔を持って頑張って生活してください」「かまってあげてください」。何だか、自分の気持ちを言っているようでもあり、切なさも感じるが、花を育てたことで、こんな気持ちを表現してくれるのだと胸が熱くなる。椎名さんの愛と熱意あるサポートが子どもたちに伝わっていた。在院生代表のメッセージの要旨をご紹介したい。
「最初、蘭の鉢を受け取ったとき、ちゃんと育てられるか不安でしたが、椎名さんから育て方を聞いて気が楽になりました。でも、最初は部屋(独房)に蘭の鉢があると、他人が同じ部屋にいるようで落ち着きませんでした。世話をしても様子が変わらない蘭に腹立たしさを感じることもありました。でも次第に気にかかるようになり、相棒のように感じました。僕たちが育てた蘭をぜひ大切にしてほしいです。そして多くの人の癒しになると嬉しいです。」彼らの心の蕾の奥には、こんな気持ちがぎっしり詰まっているに違いないことを確信した。

この取り組みが実現したのは、認定NPO法人育て上げネット の井村良英さんが久里浜少年院と当協会をつなげてくれたおかげだ。そして、椎名洋ラン園の、子どもたちが自分の大切な人にあげるために蘭の花を育てるという社会貢献活動「花育」を思い出し、椎名さんに相談しご快諾をいただいた。初年度は、職員の皆さんも自分でも育ててくれて、実現性を確認した。そして、願っていた贈呈式の実現となった。実は、椎名さんも少年たちと同じ寒い環境下で胡蝶蘭を育てていた。当日、持参してくれて、「みんなのほうが上手に育てたよ」と話していた。さんざん悪さをしてきた少年たちだが、安心を与えてくれる大人に囲まれているせいか、笑顔が可愛い。

今回の実現は、いい連携ができたことに要因があると思う。コーディネーションが大事とは言われ続けているが、なかなか難しいのも事実だ。今回は、小さい時から虐待を受け続けた少年たちに、「ありがとう」という言葉を受けてもらいたいと思った。役だつことが出来た!という自信もつけてほしかった。関わった全員が、その一点で共感し、そこに気持ちを集中させて実現した。少年たちの人生は、これからも苦労が多いと思う。帰る家もない、信頼できる大人も少ない、お金もない、そんな中での船出だ。椎名さんは、挨拶の中で、「みんなの花を見て癒される人が沢山います。これは、皆さんが誰かのために何かをしたということ。自信を持って、そして幸せになれる場所を探してほしい」と語りかけてくれた。自分のことを親身に考えてくれる大人がいることが伝わったかな。
私たち応援団は、彼らが、心のこもった新たな出会いにつながるために、知恵を絞り、共感を拡げるコーディネータとしての役割を、いい仲間とともに果たしていきたいと思う。
2021年1月28日(木)に行われた久里浜少年院での「蘭」贈呈式については、『フィランソロピー見聞録』で詳しくご紹介しています。