プログラム概要
名称:アステラス・スターライトパートナー 患者会次世代リーダーのためのリーダーシップ・トレーニング・プログラム2025
主催:アステラス製薬株式会社
スターライトパートナー(患者会支援)活動
企画:公益社団法人日本フィランソロピー協会(JPA)
目的:・会員間の良好なコミュニケーションの促進
・患者会を率いるリーダーシップ獲得
・患者のQOLを上げるための考え方やスキルの習得 ・患者会の会員が積極的に参加する組織にするために必要なコミュニケーションスキルや組織運営・基盤整備のノウハウ習得 ・助成金申請のための考え方、目標設定のノウハウの習得
日程と会場:
| 【第1回】 | 2025年9月28日(日) | アステラス製薬株式会社(東京・日本橋) | <開催報告> |
| 【第2回】 | 2025年10月6日(月) | オンライン | <開催報告> |
| 【オンライン交流会】 | 2025年10月16日(木) | オンライン | |
| 【第3回】 | 2025年10月22日(水) | オンライン | <開催報告> |
| 【第4回】 | 2025年10月29日(水) | オンライン | <開催報告> |
| 【第5回】 | 2026年2月28日(土) | アステラス製薬株式会社(東京・日本橋) | <開催報告> |
開催報告
第1回
日時:2025年9月28日(日)10:00~17:00
形式:対面開催
参加:6団体・8名
テーマ
自己探求とコミュニケーション
今年は7団体9名(1団体は第1回を欠席)という非常に少ない人数で、対面のみの状況でスタート。事務局や講師の先生も含めた全員が車座になり、今の気持ちを正直に伝えあうチェックインを行いました。
1. 講演:患者会・患者活動の意義を考える ~希少疾患の患者・大学研究者の視点から~
山本 ベバリーアン さん(大阪大学特任教授、患者会HAEJ理事長)
第1部:自分自身の経験から
第2部:患者会代表からの視点
第3部:活動の強化 協力体制
ご自身が希少疾患の患者として、また大学の研究者としての経験から、患者団体の必要性やNPO法人にするまでの工夫や苦労された点、また患者会がサステナブルな活動となるための注意点も伝えていただきました。使命感と必要性から自身の時間は捧げても、患者会にかかわるイベントの参加費や旅費・食費はきちんと団体として負担していくことが重要。そのための組織としての資金の作り方、組織運営のためのメンバーやさまざまなステークホルダーとの協業、さらに国内にとどまらず海外の患者会との連携の重要性を豊富な具体例とともにお話いただきました。
山本 ベバリーアン さんならではの視点から、患者団体の活動が社会を変えていくことの重要性が語られ、患者会の存在意義についてあらためて考える機会となりました。その後のQ&Aでは参加者の患者会の現状に対し、さまざまなアドバイスをいただきました。
◎ 参加者の声(アンケートより)
- 患者会の価値を認識しました。そして、非力ではあるが無力ではないと捉えられるように私の心持ちも変化しました。今後の課題は、患者会活動にどのように反映していくかとなります。
- 海外の患者会との連携により多方面での可能性が広がることを切実に感じることができました。また、活動資金をいかに確保していくことを改めて今後の課題と感じました。
- どのように会を設立し、運営してきたかが非常にわかりやすく参考になりました。 早速、米国本部にFacebook経由で連絡をしてみました。 今後、きちんと連携を取っていきたいと思います
2. ワークショップ:対話を通じて「自己」と「未来」を探求する
宮地 勘司 さん(株式会社教育と探求社 代表取締役社長)
はじめに「ダイアローグ」と「ディベート」の違いをご教示いただき、知っているつもりの「自分」に気づき、誰もが予想できない「未来」に覚悟をもって進んでいくために「対話」が必要だとお話しいただきました。
続いての「ペアインタービュー」では1人30分で「傾聴する、受容する、共感する」「エピソードを尋ねる」「感情、葛藤、ジレンマなどについて『心の声』を聴く」ことを大切にしたワークを行いました。お互いの話を聞きながら涙したり笑ったりしながら、自分の中にある「なにか」を見つけていた様子でした。
ワークショップの最後は「最高の未来」を思い描くこと。静かに目をつむり自分の考える最高の未来を思い浮かべ、画用紙に描きます。華やかな色使いの方、抽象的な絵の方いろいろな絵を描き、自身の最高の未来を表現しました。
現実に追われ難しいと感じていることを、素直に表現することを通じて力に変えていけるように感じられたワークとなりました。病気になったからこそ気づけた自分を表現した方も。絵の共有をしながら質問に答えるなかで、自分でも意識していなかった思いに気づくなど、学びや気づきがありました。
最後は再び車座となりチェックアウト。緊張していたチェックインの時とは違い、笑顔がこぼれるなかでこれからの4回の講義に対する期待と意気込みを語りました。
◎ 参加者の声(アンケートより)
- 最初は30分のインタビューは長いのではないか?不安の気持ちがありましたが、実施をしてみると自分をさらけ出し、相手を受け入れるコミュニケーションをこの時間で実施することができました。この経験は普段のコミュニケーションにも生かしていこうと思います。
- 自分自身のふわっとした輪郭の曖昧な気持ちがだんだんはっきりしてきました。
- 自分が乗り越えて来た困難の話をしながら、随分と大変な人生を歩んできたと、乗り越え超えられた自分自身に勇気づけられました。



第2回
日時:2025年10月6日(月)18:30~21:35
形式:オンライン
参加:9名
テーマ
多様なメンバーをまとめるコミュニケーションスキル・ファシリテーターの役割
伝え方のペアワーク
患者会はいろいろな年代のさまざまな価値観を持った人たちの集まりです。それぞれの「当たり前」が違うメンバーの活動を円滑に運営するには、多様性の中でも発揮できるコミュニケーションスキルが求められます。昨年度に続いて講師を田中康之氏にお願いし、スキルを磨くための講義を受け、ワークショップを行いました。
講師:田中 康之 さん
株式会社BRICOLEUR(ブリコルール)パートナー
<プロフィール>
慶應義塾大学卒業後、野村證券を経て、2001年リンクアンドモチベーション入社。モチベーション研究所所長、株式会社リンクグローバルソリューション代表取締役社長を務めた後、現職。多くの企業の人材開発・組織開発をコンサルタント・研修講師として支援するとともに、NPOの次世代リーダー育成なども手掛けている。
ファシリテーションに必要なこと
前半の講義では、さまざまな人たちの意見を束ね、チーム内で合意形成するために必要な能力について学びました。会議を中立的な立場から導くファシリテーターに求められる2つの力、事前のメンバー選定やスケジュール、会議のゴールの設定などの「仕込み力」、立場や意見の違うメンバーから意見や意欲を引き出して合意に導く「さばく力」について学びました。

ワークショップ(1)
2つのグループに分かれ、ファシリテーションの練習。今回は皆さんの意見の中から選んだ「有料会員と無料会員について差をつけるべきか否か」をテーマに、賛成と反対の立場を決めた上で、合意形成に向けて話し合いました。対立した意見が出ることは必ずしも悪いことではなく、それぞれが見ている事実や解釈を丁寧に解きほぐすことで多面的な視点を共有し、そこから「みんなの問題」として考えを深めていく過程を実感しました。

後半では伝え方について、主張をロジカルに伝えるための「PREP法」と、意見が違うことを前提にそれぞれの思いを引き出し、双方が納得する選択肢を導き出す「DESC法」の違いについて学びました。
多様な「当たり前」を持ったメンバーと話し合う場では、まずは客観的な状況や事実を描写することから始めることで、異なる意見や少数派の意見を取りこぼさないように洗い出し、議論を進めることが有効です。
ワークショップ(2)
前半と同じテーマについて異なる意見を持った前提でペアワークを実施。お互いに立場を入れ替えることで、それぞれの立場で感じたことを振り返り、より納得感を高めるための方法を互いにフィードバックしました。
先生からのメッセージ
患者会に何を求めて参加しているかは人それぞれなので、組織運営において企業などとは違う難しさがあります。
研修に参加している皆さんも、サードプレイスである患者会に割ける時間は限られています。セルフモチベーションを保ち続けるために、変えられるものと変えられないものを考え、変えられない「他人」、「感情・生理反応」、「過去」ではなく変えられる「自分」、「思考・行動」、「未来」にフォーカスしてください、と最後に田中先生からエールをいただきました。
◎ 参加者の声(アンケートより)
- ペアワークでは、1人で考えるよりも広い視点で深く考えることができる事を実感できました。話し合い、共有することでチームでの活動に繋げていきたいと考えています。
- 論理的に話を進めるのが基本だとしても、最初に相手の意見を受け入れるという過程があるだけで、場の雰囲気が良くなり意見の取りまとめがスムーズになることがよくわかりました。
オンライン交流会
日時:2025年10月16日(木)18:00~21:30
形式:オンライン
参加:9名
テーマ
研修での学びの意見交換および交流
今回初めての試みとして、テーマを設けず、研修参加者にオンラインで自由に交流していただく機会を設けました。参加は任意でしたが、結果的に全員が参加。これまでの研修の内容を振り返り、感想を述べあいながら、活発な情報交換の場となりました。お互いの背景を知ることで、より深い意見交換を行うベースが醸成されたようでした。
◎ 参加者の声(アンケートより)
- 活動費についての話題が主となりましたが、皆様から沢山の意見集約ができて大変勉強になりました。
- フリーでフラットな場で、リラックスして参加者同士交流が持てたことはとてもよかった。深く学び合う中でお互いへのリスペクトや信頼関係が育まれてきているように感じている。
第3回
日時:2025年10月22日(水)18:30~21:30
形式:オンライン
参加:9名
テーマ
NPO組織論/活動の意義を学ぶ ~仲間が集まり応援される組織となるために~
患者会は法人格の有無にかかわらず、非営利活動を行う組織として存在意義や提供価値が問われるものです。まずは患者会の現状を客観的に把握し、組織運営を活性化させ、資金調達にもつながるNPO組織マネジメントについて学ぶことを目的に、第3回と第4回の研修ではNPO組織基盤強化コンサルタント office musubime(オフィスムスビメ)の河合 将生 さんを講師にお迎えしました。
講師:河合 将生 さん
NPO組織基盤強化コンサルタント office musubime(オフィスムスビメ)代表
<プロフィール>
1974年静岡県生まれ。2011年7月、office musubime(オフィスムスビメ)を設立。伴走支援を専門としながらNPOの基盤強化、組織診断、評価、ファンドレイジング支援、コンサルティング・ファシリテーション等に取り組む。コミュニティ財団や地域づくり、フリースクール、子ども・子育て支援、国際協力など、複数のNPOに役員やアドバイザーとして関わるほか、大学の非常勤講師や研修講師、チャリティや寄付に関する相談・助言等の活動も行っている。日本ファンドレイジング協会認定講師、日本評価学会認定「評価士」。
講義:NPO組織の運営・マネジメントについて
組織のマネジメント(経営)とは
あらためてマネジメントとは、「共通の目標を設定し、必要な資源の洗い出しと効果的な配分を通じて組織として運営すること」と定義。マネジメントにおいて重要な点は、活動を通じて提供する「価値」「社会的意義」を言語化し、外部やメンバーに発信すること。賛同者や資金を募る場合にはもちろん、組織の一体感を高め、円滑なコミュニケーションを図るうえでも重要です。

事前のアンケートで提出された各団体の課題感も例に挙げながら、チャットも用いた双方向のやりとりを通じて団体の理想の姿や目標を整理していきました。

ワークショップ:テーマや目標を考えるための棚卸
人(組織)とお金(財務)と事業が三位一体でうまく連携して成長していくことが団体運営上の工夫のポイント、というお話をもとに、今後の活動を考えるワークを行いました。
ワークシートを用いて「過去」と「現在」と「今後」といった軸で、直面する困難や今後必要な取り組みを各自が棚卸し、その結果をグループごとに話し合いました。規模や疾患の違いを超えて、共通の課題や、さまざまな取り組みが共有されました。

最後に、団体の持続性のためにはリーダーだけが1人で担う「リーダーシップ」に頼りきらず、リーダーの仕事も棚卸しして、他のメンバーもその一部を学びながら一緒に引き継いでいく「メンバーシップ」「フォロワーシップ」を考慮した運営が重要だというアドバイスをいただきました。
◎ 参加者の声(アンケートより)
- 「マネジメント」が「他の人を通じて事を成し遂げること」という捉え方が新鮮だった。
- 個々の会員のニーズを聴き取り、患者会の活動をすることも大切だと強く感じました。一方で、支援者・寄付者から「どうして支援したのか?」を聴き取り、自分たちの患者会活動との合致点を見つけ出すことも重要なポイントと気づきました。
- 自分の所属する団体の魅力を認識し、言語化していくことが重要だということを学びました。会員だけでなく、外部にもそうしたことを発信していく必要性を実感しました。

第4回
日時:2025年10月29日(水)18:30~21:30
形式:オンライン
参加:9名
テーマ
NPO組織概論とマネジメントスキル研修 ~NPO組織論/目標の立て方、申請書の書き方~
研修第4回目は、第3回に引き続きoffice musubime(オフィスムスビメ)代表の河合 将生 さんにご講義いただき、前回学んだことをベースに、より実践的なテーマとして組織の目標の立て方、助成金の申請書の書き方をテーマに取り上げました。各団体の共通の課題である資金をどのようにつくるかに直結したテーマにもなりました。
そもそも助成金とは
助成金は、事業や活動に対する資金であるという基本を確認し、事業を通じて何を成就させるのか、という目標設定の実践的な方法論をインプットしていただきました。
目的と手段を整理した上で、具体的な目標達成のための事業計画を立てることが、助成金申請の考え方の基礎となります。

申請書を書くための具体的なステップ
まず募集要項の内容を理解し、助成元が何を意図しているか、求められるレベルなどを確認すること。次に実現までの計画の具体性に留意し、活動を通しての成長が明確に伝わるように書くことが求められるため、団体として内容をどのように具現化するか、後半ではワークシートを使って学びました。

ワークショップ(グループワーク)
事業の優先順序の判断軸の例として、緊急度の高い/そこまで高くない、重要度が高い/そこまで高くないと、4つの象限に分けたシートを用いて具体例を書き込み、それぞれの考えを共有。優先順位を整理し、行動目標を設定し言語化することは、組織運営だけでなく、助成金申請の際にも重要との認識を新たにしました。

「全部を優先でやらなくては」と考えているという団体には、講師の河合 将生 さんから、まず実行するために必要な人員を増やし、組織の基盤強化を優先するという考えもある、との講評をいただきました。
◎ 参加者の声(アンケートより)
- 活動においては手段の確保自体が目的化することが多い気がします。そういう罠に入り込まないためにも本研修は大変重要でした。
- 患者会が何かチャレンジするときに助成申請し、その度に自分たちのやりたいことがブラッシュアップされ次のステップに行くことに気づきました。
- ファンドレイジングは「お金」だけでなく「フレンドレイジング」であるというお話が特に印象に残りました。いかに応援して下さる方を増やし、ファンになっていただくかが大切だと、あらためて感じました。
第5回
日時:2026年2月28日(土)10:00~17:00
形式:対面開催
参加:9名
概要
7団体9名の参加者が、第4回までの研修の終了後に設定したチャレンジ目標に向けて、約3か月間取り組み、それぞれの成果を発表・共有しました。
講評
山本 ベバリーアン さん
大阪大学特任教授、患者会HAEJ理事長
宮地 勘司 さん
株式会社教育と探求社 代表取締役社長
田中 康之 さん
株式会社BRICOLEUR(ブリコルール)パートナー
河合 将生 さん
NPO組織基盤強化コンサルタント office musubime(オフィスムスビメ)代表
実践成果の報告
7団体が、以下の流れで発表を実施しました。
- 団体のビジョン
- 行動目標
- 取り組み内容
- 得られた成果
- 今回の研修で学んだことが活かせた点
- 今後に向けての新たな課題
発表の例
- 災害時に団体として対応するべきことの精査
- 患者の体験講演の質を担保するAI支援の構築
- 海外の患者団体との連携
- オンライン交流会の実施や若手によるイベントの企画・運営
自ら立てた目標に向けて実施・行動したことで、実務上の具体的な効果(資金獲得や活動の具体化)や、団体の組織運営に関する気づきにもつながりました。



講評のまとめ
第1回から第4回の講師の皆さまと、アステラス製薬株式会社 岡村社長や幹部の皆様からも講評をいただきました。
【組織としての進化】
本研修の回を重ねていくなかで「思いつきの活動」から「組織的・構造的な活動」へと質的に向上しており、次世代リーダーとして戦略的な目標設定やグローバルな視野が見られました。
特に「海外への視野」と「テクノロジー(生成AI等)の活用」において、素晴らしい活動が見られました。最新のツールを活用しながら、発表内容をバージョンアップさせていく姿勢についても、これからの患者会運営における必須のスキルとして高く評価されました。
【行動を通じた学び】
失敗を恐れず、ブロックを外して変化に挑む姿勢や、変化の必要性に気づいてしまったことで勇気をもって行動したことなどが高く評価されました。
「完璧を求めすぎず、まずはやってみる」というグロース・マインドセットの大切さとともに、新しい挑戦のために「今やっていることの優先順位を判断し、やめる決断をする」という戦略的な視座もアドバイスとして共有されました。
【サステナブルな運営への志向と患者団体の意義】
個人的な問題から出発し、連携することで共通の問題と認識される。患者会の活動を通じて多くのステークホルダー(家族、製薬、医療、教育などの関係者)だけでなく、他団体からもエネルギーをもらえる。それぞれの団体の成果を発信することは、他団体への励ましにもなる。戦うことで、社会に良い変化を与えることが患者会の意義である、とエールが送られました。
交流会
講評の後には講師の先生方も参加し、グループに分かれて交流会を実施。それぞれの課題や今後の活動についても話し合われました。
◎ 参加者の声(アンケートより)
- チャレンジ目標に取り組みしたことにより、今までであればしり込みすることに積極的にチャレンジし、前進できたのだと強く感じた
- 皆さんの真剣さ(本気度)に刺激を受けたことが一番の学び
- 今回の研修を通じて多様な考え方や実践例に触れ、ステークホルダーとの接点を増やせたことは、今後の持続性を考える上で大きな財産になりました。
- 講師からの講評では 自分では気づきにくい論点を示していただけた点は、今後の活動に活かせると感じています。
本報告会では、各団体の実践成果を共有し、それぞれが踏み出した一歩が互いの学びを深める機会となりました。
5回の研修を通じて互いの悩みをさらけ出し刺激し合える関係性が形成され、今後につながる成果となりました。これからも、それぞれの団体の活動を通じて「社会を変えていく重要な存在」として新たな価値を生み出していくことが期待されます。
